流通EDI標準の活用―金融連携―

流通BMS適用範囲拡大【金融連携】検討

流通BMSの普及は、小売業による"流通BMS導入に関連した取引先説明会"の開催などで、導入企業数も一気に拡大し、最近は加工食品と日用品の取引先だけでなく、アパレル、一般大衆薬や生鮮分野へ導入が進んでいる。しかし、流通業界全体では、まだ半数には達していない。
現在、流通業界以外と情報交換を行う際には、相対する業界独自の仕様や、個別企業の独自仕様、紙ベースで行なっている。流通BMSが採用している、現在のIT環境において利用しやすい「インターネット網を使用したデータ伝送」「情報の記述言語はXMLスキーマ」を使用することで、情報連携の効率化/高度化、ソフトウェア資産管理の軽減が図れると考えている。
2012年度より、「流通BMS適用範囲拡大検討会」を設置し、業界全体で企業間決済高度化を検討していた金融機関と合同で、商流EDIと金融EDIを連携し経理業務の効率化・高度化の検討を行なっている。

EDI情報欄の有効活用

1990年代半ば、金融機関とのEDI(全銀手順フォーマット)で利用者側が自由に使える「EDI情報欄(20桁)」が制定され、企業間で売掛情報消込に使用するマッチングキーとしての活用が想定されていた。しかし、現時点において当初の目的であるユーザ企業間の効率化を目的とした利用は少ない状況である。
近年の金融業界では、振込等の銀行間の内国為替取引をオンライン・リアルタイムで中継するとともに、取引に伴う資金決済を行なう為のネットワークシステムである全銀システムや、新たな日本銀行金融ネットワークシステムでは、XMLメッセージを採用し、EDI情報欄を140桁で繰り返し可能なエリアとして設計したメッセージ交換が可能となっている。
今後、金融機関でのXML対応等が進み、流通業界との情報交換で活用可能となる事を期待している。

共同実証の実施
金融業界と流通業界の間の情報交換をインターネット網利用/XMLメッセージでの実稼働に向けて、2012年度からの検討内容を基に、2014年度は11月に共同実証を行い、実運用に向け更なる前進をさせた。
共同実証では、金融業界の国際標準で定義されているXMLメッセージの総合振込と入金通知の2つを使用した。現段階で直接XMLメッセージを送受信できない金融業界に対し、全銀手順・固定長に変換・送受信する事とした(下図)。

共同実証のソリューションイメージ(ISO2022対応の新FB)

変換の為のマッピング情報などは実証参加金融機関(みずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行)による検討を基に提示頂いた。
今回の実証では利用者側でのみ利用する"拡張されたEDI情報欄(140桁繰返し可能)"の内容については、実証参加の流通業界企業(小売業:アタックスマート、イオン、コメリ、卸売業:花王カスタマーマーケティング、加藤産業、タカコー、山星屋)が、卸売業における売掛消込業務と小売業における販売条件・リベートに関する入金管理に必要な情報項目を共同実証用に定義した。

経理業務の効率化が可能!

参加企業すべてが、業務時間削減可能という結果(経理処理方式の違い等の理由)ではなかったが、大手卸売業の売掛消込業務で"1680時間/年"の削減、大手小売業の販売条件・リベートの入金管理業務で"9250時間/年"削減が実現可能との検証結果がだされた。
企業毎に、経理形態が異なっていることもあり、業界平均での効果算出は難しいが、金融機関からの入金情報に、詳細情報を付加できる事で、経理における各種入金管理業務等の効率化・高度化が実現できる企業があることを実証できた。

共同実証(2014.11)の結果報告資料 (1.23MB)

流通業界の各種経費支払対象企業との間でも活用可能と考え、2015年2月には、まだ紙による請求書および振込明細の送付を行なっている。
物流会社との間でも効果が出る事を想定し、2次の共同実証を行なった。
物流会社においては様々な単位での請求書発行を行なっており、企業によっては、支払(振込)金額=請求金額の企業もあれば、複数の請求書をまとめて支払(振込)う企業などさまざまである。
今回の共同実証参加企業においては、全体の8%(4000件/月)が後者であり、手作業で照合して売掛消込をおこなっている。
今回の共同実証でEDI情報欄に「請求書No.」や「支払金額」などの付加情報をセットする事で、簡単な照合アプリを作成すれば、90%以上のデータが自動で消込可能である事が確認できた。
しかしながら、今回実証をおこなった企業は、比較的情報のセット内容が網羅出来ていたが、全ての取引先がEDI情報欄に付加情報をセットできるかは、今後調整が必要であり、また、セットする情報について業界内での標準化は必須と考えられる。

共同実証(2015.02)の結果報告資料 (786KB)

今回の共同実証は3業務のみであり、企業においては様々な経理関連業務がある。
効率化・高度化が期待できる業務は、まだまだ多く存在するものと思われる。

今後は、実稼働に向け、共同実証結果を基に、細かな調整等を、金融機関と連携し継続的に行っていく予定である。
流通業界では、拡張されたEDI情報欄が利用可能となることを前提として、EDI情報欄の利用内容ごとに標準化等を進めていく。