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報告・レポート

ドラッグストアショーで流通BMS特別セミナーを開催
「流通BMS普及推進と軽減税率制度へのシステム対応」
~食と健康を推進するドラッグストア~

 当協議会の正会員団体である日本チェーンドラッグストア協会主催の「Japanドラッグストアショー」が千葉の幕張メッセで開催され、ビジネスセミナーとして3月15日に「標準EDI(流通BMS)推進特別セミナー」が行われた。
 本セミナーは今年で8回目となり、「標準EDI(流通BMS)普及推進と軽減税率システム対応 ~食と健康を推進するドラッグストア~」と銘打って開催された。セミナーでは、軽減税率制度への対応について、当協議会事務局として流通システム開発センターの他、財務省、国分グループ本社が講演を行った。また、本セミナーではみずほ銀行および全国銀行協会より小売企業の決済・資金管理を巡る動向の紹介が行われた。
 このうち一部のプログラム講演要旨を紹介する。

なお、財務省からは本セミナーにて伝えきれなかった内容を含めて、軽減税率制度とインボイス制度について適用税率や制度、引き上げタイミングをまたぐ取引の適用税率に対しての考え方をまとめた資料の提供があったので以下紹介する。



セミナー会場風景:2019年3月15日 幕張メッセ


標準EDI(流通BMS)推進特別セミナー プログラム

Session テーマ 講師
1 日本チェーンドラッグストア協会
業界標準化推進委員会 委員長挨拶
「標準EDI(流通BMS)の導入・推進にあたり」
日本チェーンドラッグストア協会 副会長
兼 業界標準化推進委員会 委員長
江黒 純一 氏
((株)クスリのマルエ 取締役会長)
2  
経済産業省からのご挨拶
 
経済産業省 商務情報政策局 
商務サービスグループ 
消費・流通政策課 課長補佐
田村 真丈 氏
3  
小売企業の決済・資金管理を巡る動向について
 
みずほ銀行
デジタルイノベーション部 副部長
柿原 愼一郎 氏
 
一般社団法人全国銀行協会
事務・決済システム部 調査役
浅田 寿人 氏
4  
流通BMS導入状況と軽減税率対応について
 
国分グループ本社株式会社
情報システム部 物流システム2課 グループ長
平田 幸則 氏
5 消費税「軽減税率制度」と「インボイス制度」
~ドラッグストア、どんな準備が必要なのか~

 
財務省
主税局税制第二課 課長補佐
加藤 博之 氏
 
経済産業省 経済産業政策局
企業行動課 係長
小倉 啓太郎 氏
6  
流通BMS最新動向
 
流通BMS協議会 事務局
一般財団法人流通システム開発センター
データベース事業部 兼 ソリューション第2部
梶田 瞳

業界発展のための標準化。中小企業への周知を進めたい

日本チェーンドラッグストア協会 副会長 兼 業界標準化推進委員会
(㈱クスリのマルエ 取締役会長)
江黒委員長

   

 大手企業における流通BMSの導入は進んできたが、中小企業はいまだに導入が進んでいない状況にあります。2024年には受発注システムが利用できなくなる現実がある中、約8割の会員がこの情報を知っておらず周知に苦慮しています。故宗像事務総長が業界発展のために標準化はやらなければいけないとおっしゃっていました。中小の小売業でも流通BMSに対応できるようIT企業が変換するサービスなども展開しています。2024年に間に合うように力を合わせて進めていきたいと思います。
 本セミナーでは、キャッシュレスなども含めて紹介していきますので、今後の取り組みの参考としてください。

流通の可視化を進めるうえでのキーファクターは流通BMS

経済産業省
商務情報政策局 商務サービスグループ 消費・流通政策課
田村 真丈 課長補佐

   

 キャッシュレスに対する補助について、詳細は4月以降にお知らせします。現在は経済産業省でポータルサイトを用意している。Webで「Go Cachless」と検索してください。最新情報や各種申請書などが確認できます。委託事業者の案内を開始しています。賛同いただけるキャッシュレス事業者のエントリーを開始しました。
 経済産業省では、流通の可視化を進めています。商流は流通BMSで、物流は画像も含めて物のユニット単位を電子タグで、金流はB to Cではキャッシュレス、B to Bは金融EDIとして可視化に取り組んでいます。その中でも流通BMSはキーファクターです。導入が行き渡ったとは思えません。軽減税率制度の導入も予定されていますので導入を検討してください。既に導入された企業の方からは未導入の取引先に対してこういった取り組みがあるということをお話いただきたいと思います。全てが参加しないと最大限の効率化は実現しません。中小企業への取り組みは、日本チェーンドラッグストア協会様をあげての取り組みということですが、我々としても中小企業庁からサポートを行っております。その一つが、軽減税率制度に対応するための補助金です。レジとEDIの改修にたいする補助金を用意しています。ご活用ください。

金融EDIによる経理業務の効率化と銀行業界のキャッシュレス対応

小売企業の決済・資金管理を巡る動向について

みずほ銀行
デジタルイノベーション部
柿原 愼一郎 副部長

一般社団法人全国銀行協会
事務・決済システム部
浅田 寿人 調査役

 

(浅田氏より)

 クリスマスに新たに稼働したプラットフォームである全銀EDIシステム「ZEDI」について紹介します。ZEDIは業務効率化につなげるためのシステムです。経理業務にはいくつかありますが、売掛金の消込の例であれば、月末に合算すると実際には合わないこともあると思います。現場では何の振り込みか、何に紐づくかが分からず、苦慮していることと思います。

 ZEDIは企業間で振込を行うときに商流情報をXML電文(拡張性柔軟性が高い形式の電文。流通BMSも採用している形式))で送ることで経理業務の効率化ができるというものです。どの振込かの詳細をくっつけて送ることができるので消込業務を効率化できます。支払企業にとっても、問い合わせが減るなどの効果があります。電子領収書として利用したり、データの利活用の可能性も拡大します。ファームバンキングを利用するなら、ZEDIに対応するためにバージョンアップなどを行います。ファックスやATM、窓口などで行っている場合はファームバンキングの導入を検討してください。

 ZEDIは各銀行で提供しています。皆さまがご利用されている銀行が対応しているかは、全国銀行協会のホームページで公開しています。

 銀行界として、経理業務の効率化、生産性向上のお手伝いをしていきたいと思っています。ZEDIを活用して、効率化につなげてください。

(柿原氏より)

 J-Coin Payについて紹介します。J-Coin Pay は3/1からサービスを開始したQR決済のサービスです。J-Coin Payはスマホで、お金に関わる行為(送ったり、送られたり、支払ったり)を全てできるサービスです。iOSもアンドロイドも導入が可能です。地域の金融機関も今後利用可能となっていきます。口座をアプリに登録することで、必要に応じてチャージしたり、口座にもどしたり、お店で支払ったり、子供におこずかいをあげたりということが手軽に無料でできます。コンセプトは、いつでもどこでもだれでも受けられるサービスであることです。1銀行では限界がありますので、約60の金融機関と連携していきます。

 お店の目線では以下の4つのメリットがあります。
①安い加盟店手数料…クレジットカードより安く設定しています。
②安い導入費用…クレカやフェリカは専用端末が必要ですがQRの決済はタブレットで可能です。
③既存金融機関の基盤を活用…加盟店を60の金融機関のネットワークで増やしていきます。
④海外の決済サービスとも連携…外国の人の決済にも対応します。


 現在の利用方法は、お店のタブレットでQRを出して決済する方法を提供しています。6月からはCPM(消費者からのQRを示す方法)も展開する予定です。個人間送金も無料ででき、7月から開始する予定です。10月に予定されている増税に合わせたポイント還元へも対応していきます。

 現金を扱うことの非生産性の部分をキャッシュレスで解決していきたいと思っています。また、インバウンドの需要を取り込むこともキャッシュレスの価値だと思います。経済の下振れリスクも少なくできる取り組みです。4月から地方の銀行も活性化します。お取引先の銀行に相談をしていただければサポートできると思いますので、是非ご検討をお願いいたします。

レガシーEDIは終焉を迎える。次のEDIは流通BMSしかない。

流通BMS導入状況と軽減税率対応について 

国分グループ本社株式会社
情報システム部 物流システム2課
平田 幸則 グループ長

今を時めく流通BMSの導入状況と、軽減税率の流通BMSの対応についてお話しします。

 

 導入をなぜ急ぐ必要があるかというと、一つはIP網への移行です。JCA手順や全銀手順も使えなくなります。今後、流通BMSに移り行くでしょう。もう一つは消費税10%に引き上げと軽減税率制度導入です。まもなく、レガシーEDIは終焉を迎えると思います。レガシーEDIの課題を打ち消すための次のEDIはFTP、メールEDIでしょうか?これらは非効率です。セキュリティの心配もあります。やはり流通BMSだと思います。

 固定電話からIP網への切り替え開始は2024年ですが、他事業者とのIP接続開始は2021年から開始されます。問題がなんらか発生しそうなのはこの2021年のタイミングです。しかし、さらにその前の2019年10月に軽減税率制度が始まり、区分記載請求書等保存方式への対応が求められます。

 流通BMSは対応を行いました。2018年10月に日本加工食品卸協会から流通BMS協議会にチェンジリクエストを出しました。できる限り追加・変更は抑えつつ、区分に対応するといった内容です。インボイス制度を目指すと、返還インボイスなどの考慮が必要であり、区分記載請求書等保存方式を目指すこととしました。

 その対応について、1つはメッセージを変えずにセット方法と運用の方法を決めました。もう一つは請求要件のみに請求鑑メッセージという新たなメッセージを追加しました。具体的には、流通BMSは1伝票番号内に異なる税率の商品が混在できない、また、伝票ヘッダーに複数の税率、税率別の合計金額が持てないので、伝票を8%と10%で分ける(税率毎にブレイクする)ことで記載された商品の税率を示すという内容で運用ガイドラインを更新しました。流通BMSのメッセージとしてはなにも変えなくても運用で対応きるということです。2つ目としては、税率毎の請求金額合計を表現しなければいけませんが、今の請求メッセージではできないため、税率毎の請求金額合計を示せるようなメッセージとして請求鑑メッセージというのを追加しました。なお、支払メッセージには支払内容個別という項目があり税率毎の請求(支払)金額合計を表現できますので、支払メッセージで対応するという方には請求鑑メッセージの対応は必要ありません。あくまで請求メッセージを仕入税額控除の記載事項を満たすメッセージとして利用する場合は請求鑑メッセージに追加で対応しなければ満たせないということです。

 流通BMSはこれで区分に対応できます。

 ただし、実際の運用としては課題もあります。例えば、意図せず1つの伝票内に複数の税率がはいってしまったら、どういった対応をするかなどですが、こういった内容は個別で検討する必要があります。さらに今後という意味では、インボイス制度対応に向けて、返還インボイスなどの対応を明確にし、完全対として進化させないといけませんので引き続き皆様の協力をお願いしたいと思います。

[財務省メッセージ]

消費税「軽減税率制度」と「インボイス制度」
~ドラッグストア、どんな準備が必要なのか~


(はじめに)
2019年10月1日、消費税率10%への引き上げに伴い、消費税「軽減税率制度」が実施される予定です。

1. 軽減税率制度の基本と適用税率の考え方
≪適用対象≫
 軽減税率の適用対象は、「飲食料品の譲渡」です。この「飲食料品」から「酒類」「医薬品・医薬部外品」は除かれていますので、ドラッグストア関係者は注意が必要です。
 また、現状、ドラッグストアでは、飲食料品も取り扱っていることが多く、「売上げ」の場面において、適用税率をきちんと判断することが重要となります。おそらく、多くのドラッグストアにおいては、レジで精算が行われることとなると思われますので、商品マスタでの税率設定等の作業を急ぐ必要があると考えられます。

≪イートインの考え方≫
 いわゆる「食事の提供(外食)」は軽減税率の適用対象となりません。「食事の提供」とは、「イス、テーブル等の飲食に用いられる設備がある場所において、飲食料品を飲食させる役務の提供」と定義されています。
 現状、ドラッグストアにおいても、いわゆる「イートインスペース」などを設け、お客が購入した飲食料品を食べることができるようなサービスを提供しているケースも少なくないと思います。そのようなサービスは、まさに「食事の提供」に該当することとなります。「飲食料品の譲渡」「食事の提供」のいずれも行っているような場合には、販売の時点で、お客に「意思確認」を行うなどにより、適用税率を判断することが必要になります。
 なお、「意思確認」の方法については、営業の実態に応じた方法とすることで問題なく、例えば、店内掲示に基づき、お客から「申し出」を受けるという方法でも構いません。例えば、複数の飲食料品を購入するお客から、そのうちの一つの飲食料品についてのみ「店内飲食をする」との申し出があることも想定されますが、そのような場合にも適切に対応できるような店舗オペレーションを徹底することが重要と考えられます。

≪「飲食設備」(調剤コーナーのイス)の考え方≫
 例えば、「調剤薬局の待合所に設置されているイスも『飲食設備』なのか」という疑問が多く寄せられます。調剤薬局のような飲食を目的としていない「施設」について、その施設そのものの設備は「飲食設備」に該当しないと考えます。したがって、調剤薬局の待合所に設置されているイスのように、行政から薬局そのものの設備として設置が求められているようなものについては、「飲食設備」と考えないこととなります。

≪いわゆる「リベート」の考え方≫
 そのリベートが何の目的でやり取りされるものなのかを整理することが必要になります。仕入れた商品を値引きするためのものであれば、その商品の税率が適用され、何らかの役務の提供の対価としての支払いであれば標準税率が適用されることとなります。
 「現行の会計処理によって、リベートの目的・性格を整理することとしてよいか」というような声もよく聞きます。現行の会計処理は参考要素の一つとなるかもしれません。しかしながら、それが唯一無二の判断基準ではないことにご留意いただきたいと思います。現状、小売事業者の多くは、その目的・性格が「仕入れの値引き」であっても、営業外収益や雑収入で処理していることも多いですので、目的や性格の整理なくして会計処理のみを判断基準に適用税率を判断することは、それなりのリスクを伴うこととなります。
 また、リベートの適用税率の整理は、自社の対応だけでは完結しません。取引相手との認識の共有等が必要であり、それを契約書等に明記しておくといった作業も重要になると考えられます。その際、変更契約書や覚書等を作成することが想定されますが、それらが消費税の適用税率を明らかにする観点から「リベート」の目的や性格を追記するものである場合には、印紙税の課税対象となる文書(継続的取引の基本契約書である「7号文書」を想定)における「重要事項」の変更には該当しないと考えられます。

2. インボイス制度の考え方(対応検討を始める前の「頭の整理」)

≪インボイス制度とは何か≫
 インボイスとは、「売り手が、買い手に対し、正確な適用税率・税額を伝えるためのもの」であり、一定の事項が記載された請求書等ということになります。2023年10月から導入されるインボイス制度においては、仕入税額控除を行うため、原則、そのインボイスの保存が必要になります。
 インボイスは、テクニカルには現行の請求書等に「登録番号」「軽減税率対象である旨」「税率ごとに区分した対価の額の合計」「適用税率」「消費税額」といった記載事項を追加したものです。ただ、「『登録を受けた課税事業者』しか発行することができない」ということに留意が必要です。

≪返還インボイスへの対応≫
 インボイス制度においては、返品や値引きなどが行われる場合、「売り手」は「返還インボイス」の発行が必要となります。「返還インボイス」は、「返品を受ける側」(売り手)が「返品する側」(買い手)に対して発行することが求められており、「現行の実務慣行にあわない」との指摘が多かったが、一定の条件の下、「返品する側」(買い手)からのアクションであっても運用として認めることとされています。
 また、「返還インボイス」には、返品された商品の販売年月日を示す必要がありますが、その点についても、実務慣行等を勘案し、運用上、課税期間の範囲内での一定の期間による記載のほか、事業者が継続している合理的な方法によりその年月日を記載しても差し支えないこととされており、例えば「前月末日」や、その商品の「最終取引年月日」といった記載も認められることとなります。

3. 税率引き上げのタイミングをまたぐ取引の適用税率の考え方

≪税率引き上げのタイミングをまたぐ取引の考え方≫
 税率引上げのタイミングをまたぐ取引の場合、「売り手」と「買い手」で適用税率の認識が異なるケースが生じ、「買い手」の側で「どの適用税率で仕入税額控除を行えばよいのか」という疑問が生じることがあると聞いています。
 その点、これまでの税率引上げ時の考え方と変わることはないが、基本的には、請求書等で明らかにされた適用税率(「売り手」の適用税率)にて仕入税額の計算を行うこととなります。また、請求書等で税率が明らかでない場合には、基本的には「売り手」に確認することとなりますが、それも困難な場合には、自己(「買い手」)の会計処理により算出した仕入税額を基礎として仕入税額控除を行うことも許容されることとなります。

≪今回の税率引上げからの対応≫
 2019年10月以降、仕入税額控除の要件として、税率ごとに対価の額を区分し、軽減税率の適用対象である旨を記載した、区分記載請求書の保存が必要になります。
 例えば、リースの年間契約の取引など、2019年10月以降の取引が含まれる場合には、請求書等において、「旧税率」と「新税率(標準税率)」で対価の額を区分することが求められることになります。
 これまでの税率引上げにおいては、請求書等において「税率ごとに対価の額を区分する」ことが求められていませんでしたので、この点は、新たな対応なのかもしれません。

注 文中の意見や見解等については、文書作成者の個人的な見解です。

(文書作成:財務省主税局税制第二課 加藤博之)