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報告・レポート

流通BMSセミナー in リテールテックジャパン2018
「流通BMSと全銀EDIとの連携に向けた取り組み」

 3月8日のセミナー「流通システム標準化の最新動向」で、イオンアイビスより流通BMSの事例や同社の金融機関との連携に向けた取り組みについての紹介を行った。
 本セミナーは、毎年3月に開催されるリテールテック JAPAN の1企画として、毎年、流通システム開発センターが主催しており、その1セッションとして実施したものである。
 以下、セミナーの講演要旨を紹介する。


セミナー会場風景:2018年3月8日 東京ビッグサイト会議棟

テーマ・講師

テーマ 講師
流通BMSと全銀EDIとの連携に向けた取り組み イオンアイビス株式会社
ITソリューション開発本部 部長
小林 謙太郎 氏

イオンの概要

 イオンは300を超える企業体である。お客様を中心とした生活産業で、様々な業態と連携しグループをあげて盛り上げている。常に変革、改革するグループで構成されている。 店舗数は2万店舗程度で展開している。

イオンアイビスの概要

 ジャスコの情報システム部門がイオンの情報システム部門となり、2009年にグループの機能会社として分社化した。従業員は400人程度。システムやサービスの提供を行っている。ITシステムサービスでは30社程度(主にGMSとSM企業)、シェアードサービスでは店舗における経理や人事業務をサポートセンターに集めている。主にスーパーマーケット、GMS、小売店が対象である。

イオンの流通BMSについて

 1968年に電算センターを導入し、業務のシステム化を行った。1972年からPOSシステムを導入、1990年代の後半にはホストコンピューターからオープン型へ切り替えた。2000年代以降は顧客主導型のITに取り組んでいる。世の中は日々変化しており、企業のシステムはついていかなくてはならない。特に小売業としてのITをどのように変革すべきか社内で常に論議している。一歩踏み出すには技術を組み合わせていくことが必要である。
 2003年からXML-EDIの検証が始まった。本格的に流通BMSを進めたのは2006年からで2007年4月に次世代標準型EDIを「流通ビジネスメッセージ標準」と命名し、Ver.1.0を発表した。カテゴリーと企業を拡大し、ようやく標準化として軌道に乗り始めている。2011年には製配販連携協議会の流通BMS導入宣言を49社で発表した。
 イオンではJCA手順から徐々に高速化に向かって進めていった。花王さんとのやり取りや、物流に関するASN情報など、流通BMS導入前から取り組んでいる。良いタイミングで一気に流通BMSに乗って加速度的に展開することができた。2013年には流通BMSの導入が完了し、旧JCAシステム、ホストコンピューターを撤廃した。今はクラウドへの切り替えを行っている。

流通BMSの効果

発注データの連携、出荷情報、受領データ、請求支払も現在はすべてEDI化している。ASPベンダーと組んで各取引先と交換している。
 ISDNを専用線に切り替えて回線速度の大幅な改善があった。ただ、費用はあまり改善できなかった。伝票をなくしてデータ化したことにより、月間90万枚の削減となった。ASN情報により検品の自動化、請求支払いによる業務効率化、支払い請求書の削減に大きな効果があった。流通BMS導入により一定の効果があったと言える。

金融連携

2014年に金融、小売、卸、ITベンダー、流通システム開発センターで入金消込、振込情報のデータ化による実証を行った。小売と卸間の振込情報、メーカーから振り込まれるリベート情報をデータ化することによりどのような効果があるか、また、宅配業者と宅配便伝票をデータ化することによる効果検証も行った。
 いつ誰がどういった情報に対し入金したかを明確にすることによりデータの突合ができる。
 銀行間の情報をつなげるシステムである全銀システムへはASPを介して連携した。我々はXMLで140桁の情報を持てるが、全銀システムの固定長のデータでは20桁しか使えないので、変換し送受信できるように構築を行い実証した。リベートは我々で連携承認を行う。卸は小売から振り込まれる情報を連携して消し込むといった流れとなる。
 リベートはGMSで月2,500契約、入金は1,300件あるが、半期か四半期の単位で振り込まれる。現状は、紙でやり取りするので目検で確認する。人の手で突合し入金を消し込む。これらをデータ化し、契約書番号と日付を付加すれば自動で消し込むことが可能になる。
 結果、自動的に消し込めたのは全体の43%、補助機能的なものをつけると29%、全くできなかったのが30%程度であったため70%は自動消込ができた。時間で表すと、年間9,250時間の削減となる。全体の削減率としては61%であった。実証に同じく参加した九州のアタックスマートも60%ぐらいの時間削減効果があったので、我々と同じくらいの効果である。卸側の効果も高く、実証は効果ありとの結果で終了した。

今後の取り組み

 本番稼働に向け、銀行や流通システム開発センターとも話をしている。金融でもXML化が始まっており、2018年の12月までにXMLに対応した新しい全銀システムを稼働させると発表した。詳細は本日配布しているパンフレットを見て頂きたい。
 いよいよ本格的にデータを使って色々なことが実現できるようになる。次のステップに進みたい。そのためには、データフォーマットの標準化が必要である。どういった項目を使うか。小売と卸でやり取りする場合は「流通」という区分が必要である。データ区分は売掛やリベート、経費が必要であるなどである。今年度中にフォーマットを確定させ、できれば今年度の下期には本格稼働に向けた接続テストなどができないか、ITベンダーと模索している。
 ASPベンダーと銀行のASPをうまく連携できれば、振込情報がASPを介して取引先に届くような仕掛けが構築できるのではないかと考えている。照合機能をASPが行うのかお互いが行うかはこれから検討していきたい。

最後に

 月15,000件の振込情報と月1,000時間の問い合わせ対応への時間と人手がかかっている。さらに様々な種類の納税処理も月に60時間ぐらいかかっているのでトータルすると月1,100時間、年間1万時間はかかっていることとなる。これらがデータで連携できれば、大きな効果が得られると考えている。現状は、小売と卸だけではなく宅配業者との経費など、様々な事務作業が発生している。データで連携できれば、消込作業などの簡素化も実現できる。
 この先に進むには、まずこの仕組みを作り上げ、小売と卸で確実に実現することが必要である。請求や振込のデータはある程度仕組化されているので、伝票からデータに起こすことは我々も取引先も実現している。しかし、まだまだお互いの会社でシステム化したものを、途中で紙を出力して郵便で送って、目検で確認して振り込むということを行っているものが多い。そのままデータでつなぐことができれば効率化につながる。
 今年度、できれば何とか銀行と連携し、手作業のデータ化、業界をまたがったデータの連携ができればと考えている。
 まずは今年度、その一歩を踏み出せればと思っている。