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報告・レポート

ドラッグストアショーで流通BMS特別セミナーを開催
「標準EDI(流通BMS)導入に向けた課題と取組み」
~2020年に向けた課題と対応~

 当協議会の正会員団体である日本チェーンドラッグストア協会主催の「Japanドラッグストアショー」が千葉の幕張メッセで開催され、ビジネスセミナーとして3月17日に「標準EDI(流通BMS)推進特別セミナー」が行われた。
 本セミナーは今年で6回目となり、「標準EDI(流通BMS)導入に向けた課題と取り組み ~2020年向けた課題と対応~」と銘打って開催され、NTT東日本よりINSネットディジタル通信モードのサービス停止や卸売業における導入事例の紹介とともに、中小企業を対象とする軽減税率対策補助金などについてそれぞれ説明を行った。
 このうち一部のプログラム講演要旨を紹介する。


セミナー会場風景:2017年3月17日 幕張メッセ

標準EDI(流通BMS)推進特別セミナー プログラム

開始時間 テーマ 講師
13:30 日本チェーンドラッグストア協会
業界標準化推進委員会 委員長挨拶
「標準EDI(流通BMS)導入への取組み」
日本チェーンドラッグストア協会 副会長
兼 業界標準化推進委員会 委員長
江黒 純一氏
(㈱クスリのマルエ 取締役会長)
13:35 経済産業省からのご挨拶 経済産業省 商務情報政策局 商務流通保安グループ
流通政策課 課長補佐
佐藤 猛行 氏
13:40 「INSネット(ISDN)データ通信」終了に向けたIPへの移行について 東日本電信電話㈱
ビジネス開発本部 第一部門
ネットワークサービス担当課長
山内 健雅 氏
14:00 流通BMSの導入状況と今後について 伊藤忠食品㈱
情報システム本部 情報システム開発部 部長
福岡 隆 氏
14:20 流通BMSにおける軽減税率対策補助金の活用 独立行政法人中小企業基盤整備機構
経営支援部 経営支援企画課 
消費税軽減税率対策補助金統括室
参事 前田 和彦 氏
副参事 清水 敬広 氏
14:40 流通BMS導入に失敗しないための注意点 ㈱ユニックス
基幹系事業部 苅和 元気 氏
15:05 「流通BMSの最新動向」 流通BMS協議会 事務局
一般財団法人流通システム開発センター
ソリューション第2部 新規事業グループ
梶田 瞳

「商品が届かないというリスクを早めに回避し、標準化で業界全体のコスト削減を!」

日本チェーンドラッグストア協会 副会長
兼 業界標準化推進委員会 委員長
(㈱クスリのマルエ 取締役会長)
江黒委員長

まだまだ歩みが遅い。3年後のオリンピックの年にNTT東日本/西日本(以降、NTT東西)のINSネットディジタル通信モードが使えなくなる。今までのEOSが使えなくなり、発注しても商品が届かないということもありえる。

今年半ばからNTT東西よりDMなどで周知すると聞いているが、流通BMS稼働までには半年以上かかる。さらにはSEの不足から順番待ちもでてくる可能性があるため早急に変更をしていってほしい。後になればなるほどコストアップにもなるだろう。

軽減税率に伴う複数税率対応については、今までのJCA手順では対応できないため標準EDI(流通BMS)への切り替えは必須になる。さらに、決済業務の効率化につながる金融EDIとの連携も先が見据えているし、セルフメディケーション減税の対応、調剤・医療用医薬品も含め流通BMSに一本化することにより流通業界のインフラ整備が図れ、流通業界全体でのコスト削減を実現することになる。みなさまのご支援ご協力をお願いしたい。


「サプライチェーン全体の効率化の柱は流通BMS」

経済産業省
商務情報政策局 商務流通保安グループ 流通政策課
佐藤猛行課長補佐

流通政策課は流通業、小売業の皆様と日々やり取りをする機会が多い。最近は、ビッグデータをどう利用して売上を上げるかというようなことや、業務の効率化を推進するサポートができないかという観点で日々業務を行っている。

サプライチェーン全体の効率化を行う上では標準化された流通BMSが柱であると考える。経済産業省としても2006年から取り組みを支援している。

それぞれで別の仕組みを使うのではなく、標準化されたものを利用することで取引コストや効率化が図れるので、ご理解ご協力をお願いしたい。

また、2020年度の後半にはINSネットディジタル通信モードのサービス終了も予定されており非常に大きな課題となっている。早めに対策をし、流通BMSに切り替えていただきたい。

経済産業省、中小企業庁においては、消費税増税に伴う軽減税率対応を万全に行うべく動いている。軽減税率に対する補助金も用意しており、流通BMS切り替えにも活用できるので、早めの準備をお願いしたい。


「確実に起こること。変化に合わせて新しい技術へ早めの移行を!」

『「INSネット(ISDN)データ通信」終了に向けたIPへの移行動向』

東日本電信電話㈱
ビジネス開発本部 第一部門 ネットワークサービス
山内健雅担当課長

2010年から固定電話網の変化については順次アナウンスしている。ただ、世間一般には知られていない。我々も本格的に周知活動をしていこうとしている。早めの準備をしていただきたい。

PSTNマイグレーションとは、電話網をインターネットの技術を使った通信網に切り替えていくこと。これにより終了するサービスがある。

進める理由として、ひとつ目は音声を取り巻く環境が大きく変化しており固定電話が使われなくなっていること、ふたつ目は電話網で使用している交換機が寿命を迎えることである。

電話局と電話局を結ぶ回線をすべてIP網に移行し、アクセスするケーブルはメタルから光に移す。基本的に光の比重は高まるが、メタルケーブルは一部そのまま利用できる予定である。ただ、これまでの交換機はなくなるため、提供しているサービスが一部利用できなくなる。

今後、固定電話の音声サービスとして”もしもし、はいはい”の電話や公共性の高いサービスは引き続き使えるようにしていくが、INSネット(ディジタル通信モード)は提供できなくなるサービスの1つである。後ろ倒しもあるが2020年度後半には終了予定である。

INSネット(ディジタル通信モード)はEDIやPOSレジ、クレジットカードの端末で利用しており、小規模向けのINSネット64、大規模向けのINSネット1500がある。INSネットは通話とデータ通信の2つのモードが使える。主に受発注も含めた通信であるディジタル通信モードが利用できなくなる。

利用しているかどうかの判別は、契約などでは分からず、機器や利用形態で判別していただくこととなる。まずは、現状を確認いただきたい。サービス提供まで時間が限られている。サービス提供終了間際まで動かないと基幹業務にかかわっている場合もあり、何かあった際の影響度合いが大きい。これを機に通信回線の見直しを図って、コスト削減にもつなげてほしいと思っている。

確認の仕方としては、TAやDSUという機器に線がつながっているかを確認したり、機器メーカーに確認したりする方法がある。また、利用していればINS通信料として料金の請求書がNTTから送られているので確認してほしい。ただ、頻繁に使っていなかったり、他社を経由していたりする場合はわからないこともあり注意が必要だ。

IP網に移行するのが一番である。NTTでは光の回線をいくつか用意しているので回線の切り替えを早めに検討してほしい。

総務省における委員会で電話網の移行についての話し合いを17回にわたって実施している。今年の夏には総務省から電話網をどのようにしていくか発表される予定となっている。NTTとしては秋口に確定した情報を案内する予定で、以降、本格的にDMやマス広告媒体を使って周知する予定である。

まだ決まっていないことも多々あるが、確実に起こることなので早め早めの対策をしてリスクを減らしてほしい。通信環境の変化にあわせて新しい技術への移行に着手していただきたい。


「流通BMS以外では間に合わない!マッピングシートチェックの活用を!」

『流通BMSの導入状況と今後について』

伊藤忠食品㈱
情報システム本部 情報システム開発部
福岡隆部長

流通BMSは実証当初より参画している。2006年の中頃から要件定義、設計開発を経て2007年1月頃に接続、4月から本稼働している。本稼働当初は実証を行ったスーパー4社から始まり、2016年には42社となっている。接続ID数としては酒と食品で分かれているため100に近い。ただし、接続比率はレガシー(JCA手順など)がまだ80%もある。対して流通BMSは10%ほどである。明細比率では流通BMSが36%で、ここから増えていくと予想している。レガシーは60%となっている。

流通BMS導入効果は、個別のプログラムがなくなり標準化されているため開発期間が短くなる。また、通信時間は50分かかっていたものが1~2分に激減し、送受信処理の待ち時間も1時間ほど短くなった。開発時の問い合わせも標準でマッピングシートや協定シートが用意されており激減した。専用センターでの出荷作業着手時間も、1時間早まった事例もある。受領データによる計上チェックの精度アップもある。それらをまとめると、効率性(開発工数の削減、管理の簡素化、通信時間の削減)・有効性(作業精度の向上)・経済性(通信コストの削減、アプリ資産の減少)の3つのメリットがある。さらに、軽減税率対応や金融EDIへの連携など将来性も期待でき、さらなる効率化への動きもある。

流通BMSの課題としては、項目の意味を間違えて利用したり、協定シートにある稼働時間外にデータが送られ正常に処理できないなど、標準に沿わない利用があげられる。EDIとしての課題は、2020年度後半までに弊社のレガシー手順からの流通BMSへの切り替えが間に合わない可能性があるという点だ。

現状のレガシーを利用している社数を単純に平準化しても2日に1社切り替えないと間に合わないほどレガシーはまだ多く利用されている。2020年年度後半間際に小売業から駆け込みで依頼があっても物理的に間に合わない可能性もある。この場合、標準外利用やWeb-EDI、メールEDIなどは断らないといけないか、後回しになることも考えられる。流通BMSを正しく利用している企業、特に流通BMS協議会ホームページで公表されている標準に準拠した企業を優先して取り組んでいくことになると思っている。流通BMS協議会で行っているマッピングシートチェックを受けて標準に準拠しているとされた企業は、各取引先の対応をスムーズに行っていただける保証のようなものと考えている。チェックを受けて標準に準拠していれば同協議会のホームページ上で公開されるので活用してほしい。

最後に、流通BMSはより速い普及拡大が効果回収の最大ポイントとなるが、同時に標準化することが重要である。また、これらの取り組みがサプライチェーン全体の最適化となり、最終的にはお客様への対応につながると思っている。より積極的により多くの企業の参画をお願いしたい。


「流通BMSの対応に軽減税率対策補助金を活用」

『流通BMSにおける軽減税率対策補助金の活用』

独立行政法人中小企業基盤整備機構
経営支援部 経営支援企画課 消費税軽減税率対策補助金統括室
前田和彦参事・清水敬広副参事

(冒頭、前田氏より)

軽減税率制度が平成31年10月より実施される。飲食料品を取り扱う事業者は8%と10%を区分して管理する必要がある。つまり複数の消費税率に対応する必要がある。具体的には、仕入の発注や受注業務、請求書や領収書の発行、売上仕入の記帳、税額計算など様々なプロセスにおいて複数税率の対応が生じることとなる。このため小売・卸売業では複数税率に対応したレジの導入や受発注システムの改修が必要になる。これらを推進するために国が用意した支援策が、軽減税率対策補助金である。

本セミナーでは、ドラッグストア業界における流通BMSの普及推進を図る目的で、受発注システム改修における補助金について紹介したい。

これは中小企業が対象で、補助金の支払いは直接卸売業者と小売業者へ行われる。大企業の卸売業・小売業の方々はこの補助金に直接関係しないが、日ごろEDIを利用して取引をしている中小企業の取引先に向けて、システム改修が必要となることを伝えないと取引に影響が出ることとなる。軽減税率が始まった後も業務が円滑に行えるように、取引先の中小企業の方々に対してシステム改修を促し、補助金の制度をお伝えいただきたい。

流通BMSの普及において、大企業ではほぼ対応しているようだが、まだまだJCA手順が残っていると聞いている。JCA手順では複数税率に対応できない場合もあり、待ったなしの状態だ。中小企業の事業者においては流通BMS導入の壁に費用の面もあると聞いている。この補助金をぜひ活用いただきたい。

(以降、清水氏より)

消費税引き上げと同時に適用される軽減税率の制度の対象は、飲食料品で税率8%となる。飲食料品を取り扱う事業者は2つの税率を扱い管理する必要がある。外食・酒類については対象外である。例えば、コンビニ等で売られているミネラルウォーターは食品に該当するため8%。水道水については飲み水にも利用するし、洗濯・お風呂等生活用水もあるので仕訳ができず軽減税率の対象にはならない。栄養ドリンク(医薬部外品)、医薬品などは食品に該当しないため軽減税率の対象とならない。特定保健用食品や栄養機能食品、健康食品、美容食品は医薬品に該当しなければ軽減税率が適用される。ノンアルコールビールや甘酒は酒税法に規定する酒類に該当しないため軽減税率が適用される。お店にある商品ひとつひとつに確認が必要となる。詳細は国税庁のホームページにあるQAで確認してほしい。

経理システムや連動する受発注システム、在庫管理、販売管理など、いろいろな部分に複数税率への対応が必要になる。しかし、流通業界におけるシステム上の課題としては、EDIの標準推進や、INSネットディジタル通信モードのサービス終了への対応など様々である。軽減税率対応における支援策を、これを機に活用してほしい。

補助金の制度は非常に細かいため、本セミナーではポイントを紹介する。

卸売業・小売業の中小企業の事業者が受発注システムを改修する際に補助金を適用できる。システム改修はシステムベンダーに依頼することが多く、そのシステムベンダーへの外注費用が補助金の対象になる。システムベンダーの協力が必要な制度の立て付けになっている。

補助金は、中小企業に該当する事業者、現在EDIを行っている事業者、軽減税率対象品目を取り扱っている事業者が対象である。中小企業の要件としては、資本金と従業員の数で規定されている。資本金が小さくても大企業のグループ会社はみなし大企業という取扱いになり、補助金の対象から外れるので注意が必要である。また、経費の3分の2が補助の対象になる。上限額は発注側、受注側、システムの内容によって変わる。たとえば1500万円の費用がかかった場合、1000万円が補助の対象になる。さらに、受注側のシステムの場合は上限が150万円、両方の改修が必要な場合は1000万円となる。商品マスタや受発注の管理をするシステムが対象となるが、会計部分のシステムは対象とはならないため注意が必要である。

システム変更でシステムベンダーに外注する場合は、B-1型が対象となる。システム内容を記載し申請書を提出してもらう必要があるが、小売業ではなかなかできないこともあるため、システムベンダーから申請書を書いてもらう流れとなっている。

システムベンダーと改修の方針について話し合い、システムベンダーには指定事業者として登録をしてもらう。補助金の申請準備をし、システムベンダーを通じて補助金の申請を行う。申請の審査に合格し決定のお知らせが届いたら改修作業に着手する。通知前に改修を行うと補助金が出なくなるので注意が必要である。改修が終了したのち、システムベンダーへ支払いを行う。その後、システムベンダーより完了報告の手続きをしてもらう。この報告の提出期限が来年(平成30年)1月31日となっている。1年をきっており早めに取り組んでほしい。完了報告の提出のあと補助金が振り込まれる。

まず、軽減税率が実施された際に複数税率に対応できる受発注システムかどうかを早いうちに確認してほしい。改修が必要な箇所、費用、期間を確認し、補助金を利用する場合は期限が決まっているので早めの取組みが必要となる。

問い合わせはコールセンターを設けているので、ホームページで確認してほしい。また、2冊のパンフレットも作成した。ホームページでも公表しているので活用してほしい。本セミナーでは受発注の部分の話をしたが、レジの買い替えを支援する補助金もある。A型と呼んでいる。

是非とも利用して、対策を進めてほしい。