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報告・レポート

流通4団体合同
「流通BMS普及促進説明会(東京)」開催

 流通4団体 注)は8月28日(金)東京・千代田区のTKP東京駅大手町カンファレンスセンターで、9月16日(水)に大阪のオール日本スーパーマーケット協会会議室で2015年度「流通 BMS 普及推進説明会」を開催し、本協議会から流通BMSの最新動向を説明した。
 4団体では2012年1月以降「流通BMS活用説明会」を開催してきたが、今回の説明会はそれに続くものである。今年は、物流や生鮮の分野での業務改革や活用事例を中心に、2015年を流通システム変革の年と位置付け、スマクラの機能拡充の紹介のほか、埼玉に18店舗を展開している「与野フードセンター」、首都圏にFC含め50店舗展開している「花正」の事例と取り組みが紹介され、多くの来場者の注目を集めた。当センターからも坂本が正会員活動支援の一環として最新状況について講演し、流通BMS協議会の運営委員長である高波委員長からも国分としての対応状況や、加工食品卸売業界全体としての状況もふまえて、普及に対しての今後の取り組みについて紹介した。
 以下、東京会場の一部講師の講演要旨を紹介する。

注)(一社)日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、
  (一社)新日本スーパーマーケット協会、(一社)日本ボランタリーチェーン協会

2015年度 流通4団体合同「流通BMS普及促進説明会(東京)」プログラム

時間 内容
14:00~14:30 講演:『シナリオ2025概説』
  - 10年後のスーパーマーケットを展望した「シナリオ2025」の取組み経緯と内容

一般社団法人 日本スーパーマーケット協会 事務局長 江口法生氏

14:30~14:45 講演:『流通BMSの普及状況と適用拡大に向けて』
  -普及状況と課題、金融連携などこれからの利用方法に関して

流通BMS協議会 事務局 流通システム開発センター 坂本真人

14:45~15:20 講演:『流通BMSの導入と生鮮物流効率化の取組み』
  - 生鮮物流に流通BMSを活用。入力業務やリスト仕分け廃止等によるセンター業務改善事例

株式会社与野フードセンター 企画室 兼 商品部 物流担当 主任 宗行利雄氏

15:20~15:35 講演:『流通BMSの普及にむけたスマクラの機能拡充のご案内』
  -流通BMS生鮮・物流の導入事例の紹介

一般社団法人 日本スーパーマーケット協会 流通推進部 篠原豊氏

15:45~16:20 講演:『流通BMSを活用した基幹システム再構築と業務改革』
  -連続増収のジャパンミートグループの子会社「花正」の流通BMSを活用した業務改善

株式会社ジャパンミート 経営企画室 室長 関根大介氏

16:20~16:40 特別講演:『電話網(PSTN)からIP網への円滑な移行について』

東日本電信電話株式会社 ビジネス開発本部 第一部門ネットワークサービス担当 山内健雅氏

16:40~17:00 講演『標準外利用の拡大防止策と電話網廃止に伴い順次JCA切替えを促す活動に関して』
  -流通BMS導入が進む中、標準外利用の問題と、
   JCA手順廃止の問題への業界団体の取り組みをご紹介

流通BMS協議会 運営委員会 委員長 兼 国分株式会社 情報システム部 部長 高波圭介氏

「スーパーマーケットの課題と展望」

日本スーパーマーケット協会

事務局長 江口 法生氏

 日本スーパーマーケット協会では幾つかの委員会や検討会を実施し情報交換や統計調査を実施している。このなかの取り組みの一つとして標準化の取り組みを行っており、物流においてはクレートの標準化を、情報システムにおいては流通BMSを取り上げている。いずれも業界標準であり、流通4団体※で、生産性向上に向けた取り組みの基盤として進めるものである。
 今後については、「シナリオ2025」に、10年後のスーパーマーケットの在り方をまとめている。情報システムとしては、プラットフォームをあわせて効率化を進めていくことが必要であり、製配販での連携が必要である。ここで重要になるのが標準化であるとしている。「シナリオ2025」には「業界標準を積極的に採用し、サプライチェーンのコストを削減し生産性を高める」としている。
 物流クレートの標準化については、通箱のサイズを合せると同時に賛同する企業間で自由に利用できるなどの取り組みを行い、大きな効果を上げている。
 情報システムとしては製配販で情報の連携を図ることで、効率化につながることが分かっており、3年前から業界全体の最適化を図る目的で進めている。最新の技術を利用し、業務の効率化やスピードアップ、メッセージの標準化により余分なコストの削減につながる。インフラの環境変化もあるため、早めに対応を行うよう働きかけていく。

「流通BMSの導入と生鮮物流効率化の取組み」

株式会社与野フードセンター

企画室 兼 商品部 物流担当 主任 宗行利雄氏

 埼玉に18店舗を展開している。流通BMSの導入のきっかけは生鮮センターの再構築である。検討は1年前から始め、センターの稼働に合わせて導入することができた。1年後には物流センターも変更し、ともに流通BMSに対応している。店舗直接納品の取引先の対応が完了するとJCA手順は全て終わらせることができる状況にある。検討から半年、IT企業のサポートもありながら社内メンバー3名で導入を行った。少ないリソースでも対応できたことは非常に助かった面でもある。
 流通BMS導入のメリットについて不安を持つ小売もいるようだが、それにはいくつかの原因があると考えている。よくメリットとして上げられる通信速度や伝票レスによる効果は大きいが、それだけではない。ポイントなのは流通BMSは情報システムの話だが、色々なところに効果が出てくるという点である。よって、効果が見えにくくなっている原因の1つとして、他の部署がどのようなオペレーションで業務をしているのかを把握できている人は少ないということが上げられる。特に物流現場においては委託していることも多く、システムやオペレーションが見えていないことが意外と多い。流通BMSの導入を検討する時にはプロジェクトメンバーとして広く業務を俯瞰して見てくれる人材を入れることが大切だ。流通BMSを導入するということだけではなく、どう活用していくかを検討することがポイントとなる。
 以前の生鮮センターでは紙での作業が多く、処理が煩雑で、仕訳作業の精度が低下したり、入庫検品の情報処理の間トラックを待たせるなどが発生したいた。これを全てデータでのやり取りとし、トラックよりも早くデータを受け取ることで、トラックを待たせることもなくなった。現在ではEDI化率は100%になっている。出荷データから物流ラベルを活用し情物一致させる仕組みを構築し、誤出荷・誤配を無くす取り組みを行った。誤配があると正しいところに運び直すという作業が発生し非常にコストに影響するためとても大きな効果に繋がる。
 JCA手順の際にこのような取組みを行おうとしても、対応頂けない取引先もあったが、流通BMSは業界で取り組んでおり、対応してもらえるというのも大きなメリットと言える。
 流通BMSのメッセージには様々な項目が用意されており、さらなる活用も検討している。
 物流現場では、伝票がまだまだ使われている。センター長が伝票処理に2時間悪戦苦闘しているということはないか?どうせ変えるなら積極的な取り組みを行うべきである。

「流通BMSを活用した基幹システム再構築と業務改革」

株式会社ジャパンミート

経営企画室 室長 関根大介氏

 花正として首都圏にFC含め50店舗展開している。流通BMSは事業拡大を視野に耐えうるシステム環境整備の1つとして取り組んだ。流通BMSだけではなく情報システムのインフラから基幹システムまで全ての入替をおこなった。導入期間や業界標準、拡張性、システムの課題克服をポイントとして導入を決定。JCA手順は全て撤廃し、流通BMSの利便性をフル活用したシステム構築を行った。
 流通BMS、Web-EDI、オートFAXに対応し、ほぼすべてのEDI化を実現。鮮魚部門も流通BMSを活用しデータ化が実現した。伝票レスで工数も削減。伝票も95%削減した。照合作業時期にはオフィスの3分の1を占領していた伝票がなくなり、紙やデータが入り混じり照合作業に多くの時間を割いていた非生産部門である情報部門の人件費が削減できたのは一番大きな効果だったと感じている。規模を拡大してもこのような作業が増えることはなく積極的になれる。取引先とのやり取りも請求書をFAXで送っていたがこういった作業ももなくなった。自動発注にも繋がる。
 業界標準の仕組みで流通BMSをフル活用して短期間で実現し、多くのメリットを生み出せて大成功だったと感じている。

「電話網(PSTN)からIP網への円滑な移行について」

東日本電信電話株式会社 

ビジネス開発本部 第一部門ネットワークサービス担当 山内健雅氏

 1985年~95年は電話を中心としていた世界が、ブロードバンド、インターネットが伸長し、今ではスマートフォンをはじめとするモバイルが一般的となっている。
 インターネットのブロードバンド化は企業にもだいぶ浸透している。公衆回線網、加入電話、ISDNといったものは将来的に終了していく。世界的に見てもこれらのインフラを担う機器を作れる状況ではなく、維持していくことができない状況にあるため、IP網への統合は避けては通れない。今後、継続してサービスを提供可能なものと、難しいものに分かれる。従来の音声サービスは引き続き利用できるよう検討しているが、企業でデータ通信を利用しているケースは維持するのが難しい。これがISDNのデジタル通信モードの終了である。INSネット64、INSネット64・ライト、INSネット1500については2020年度後半(平成32年度)に終了することが決定している。POSレジ、CAT端末(クレジットカード)、警備端末、G4FAXという速度が比較的出るFAXが使えない場合がある。古くから回線を敷設して、使っていないという場合もあり注意が必要。毎月送付しているNTTからの請求書には、ISDNの通話料なのか通信料なのか分けて記載し請求しているので、通信料があるかどうかを確認することで、利用しているかどうかを判断することができる。ただし、ISDNをバックアップや着信で利用しているケースもあり、利用されてない場合は請求書に記載されないので注意が必要となる。サポートしているIT企業に問い合わせたり、ターミナルアダプターまたはその手前のDSU(※1)を確認し、デジタル通信モードに接続されているか確認が必要である。
 様々な企業に影響があるため、今後は周知活動に力をいれようとしている。ただし、一気に公表してしまうと、どう移行したらいいのか分からないなどの混乱が生じる可能性があるため、順次切り替えを案内している。光のサービスに早期移行を検討してもらいたい。
 電話網からIP網に移行する流れは変わらない。背景を理解いただいたうえで、これをキッカケにして、早めに検討し、IPベースの流通BMSなどへの移行等、前向きなシステム改革をしていただきたい。

※1:Digital Service Unit の略で、「デジタル回線終端装置」のこと

「標準外利用の拡大防止策と電話網廃止に伴い順次JCA切替えを促す活動に関して」

国分(株)

情報システム部長 高波 圭介氏
(流通BMS協議会 運営委員会 委員長)

 日本加工食品卸協会(以降、日食協と略す)は119社の卸の集まりで、流通BMSを推進している。各団体と連携し標準化に取り組んだり、日食協の会員卸に流通BMSの導入状況に関するアンケート調査を行ったりしている。国分の流通BMS取り組みは2005年からで、国分として流通BMSで接続している小売は96社。2012年から13年の間は43社から83社に倍増したが、最近は頭打ちの状態である。効果は、フォーマットを標準化できることにある。JCA手順では各小売業とのデータ交換をするには、様々なシステム開発が必要であったが、流通BMSでは余分な開発が要らなくなる。ただし、効果を最大限得るための課題として、標準に沿わない運用や標準の取り決めのない個別の対応がある。また、従来のJCA手順を継続していると、二重対応となるためコストは下がらないという問題もある。
 卸売業界の中の社内啓発も必要である。情報志向型卸売業研究会(略称、卸研)、日食協の情報システム研究会の活動を進化させる必要がある。加工食品卸の業界では流通BMSがほとんど入っているという状況にあるが、日食協のアンケートでは、従来型(JCA手順、全銀BSC手順、全銀TCP/IP手順)レガシーEDIの接続社数は1893社あり、うち流通BMSに移行した社数は251社。切り替え率は19%に留まる。8割の小売業と、まだレガシーEDIでやっているのが問題のひとつである。我々から積極的に小売業に流通BMSをやろうと投げかけてもいいと思っている。今年の7月から流通BMS協議会の普及推進部会の配下に普及推進タスクチームを設置し活動を始めた。ここでは、普及にむけた具体的な施策を検討しており、その一つには、普及に影響する標準に沿わない利用の蔓延防止策として、たとえば小売業が流通BMSの開発前のマッピングシートが作成できた段階で流通BMS協議会へ申請を行ってもらい、確認・承認することができないかと検討している。さらに小売、卸の団体連名で普及促進に関する宣言をするなど、卸から普及推進の仕掛けを積極的に行っていく予定である。2020年度後半までのロードマップは卸側でも作る必要がある。残りの8割を流通BMSに移行するとなると、例えば2019年や2020年に駆け込み的に切り替え依頼が小売から来ても対応できない場合も想定される。国分だけでなく、日食協に参加している卸企業も能動的に流通BMS導入に向けて動く必要があることをご理解いただきたい。


セミナー会場風景(8/28、東京・千代田区のTKP東京駅大手町カンファレンスセンター)